椿
落椿あれっといったように赤
池田澄子
もうあとへもどれす椿ひらき初む
火箱ひろ
椿落つたれも届かぬところかな
辻 水音
落花
ちるさくら海青ければ海へちる
高屋窓秋
飛花落花カートの犬の立ちんぼう
笹村ルル
再会の予感しかなき花吹雪
はしもと風里
枇杷
びわ熟れる土星にいとこいる感じ
坪内稔典
枇杷描いて描いて毎日キッチンに
辻 響子
友だちのふるさと切手枇杷を剥く
つじあきこ
夏
算術の少年しのび泣けり夏
西東三鬼
潮風を待つ少女だった夏
波戸辺のばら
蒸し風呂の奥に明るい夏の闇
たかはしすなお (写真小さくてごめんなさい)
鰯雲
鰯雲子は消しゴムで母を消す
平井照敏
鰯雲橋を渡ってみる日本
つじあきこ
結局はひとりね羊雲群れて
松井季湖
案山子
へのへのと横目で睨む案山子かな
和田 誠
握り飯がうまい昔気質の案山子
鈴木みのり
鍵穴を失くした鍵とか案山子とか
笹村恵美子
葉牡丹
葉牡丹の縮緬渦や小宇宙
田中浅子
抱き寄せて葉ぼたんの葉のいびつ
辻 水音
葉牡丹のうずうず夢がまたひとつ
火箱ひろ
初 空
初空や大悪人虚子の頭上に
高浜虚子
たつぷりの青を含みて初御空
はしもと風里
シーサーが笑う声する初御空
たかはしすなお