早春
前髪を上げ早春の銀座まで
加藤あけみ
海藻の森くらくらと春めきぬ
種田果歩
大股で歩く早春の風の中
林田麻裕
馬酔木の花
たたら踏む音の静けさあしび咲く
中林明美
真昼間を馬酔木の花が音たてる
鈴木みのり
馬酔木咲く鬼ごつこ逃げろ逃げろ
おーたえつこ
風薫る
街路樹はキリンの歩幅風薫る
土肥あき子
風薫る犬山でんでん笛太鼓
小山佳栄
風薫る廊下に十(とお)のお弁当
辻 響子
昼 寝
くの字から大の字になる昼寝かな
永 六輔
亡き猫の胸に重たき昼寝覚
松井季湖
一村が昼寝したまま水の底
波戸辺のばら
柿
棒切れで打つ三塁打柿熟るる
ふけとしこ
ころ柿や母の電話はすぐ切れて
波戸辺のばら
柿食ふや何を食べてもよき病
畑田保寿美
蜻蛉
とゞまればあたりにふゆる蜻蛉かな
中村汀女
達筆の一膳飯屋とんぼ来る
種田果歩
セルフ給油終えてトンボの宙返り
笹村恵美子
冬
ふきげんというかたまりの冬の犀
坪内稔典
何の日もだろう真冬の昼明かり
辻 水音
開け放つ冬のお座敷笑い声
火箱ひろ
枯蓮
枯蓮のうごく時きてみなうごく
西東三鬼
枯蓮に庭園灯のとどかざる
はしもと風里
大輪の白咲く予定枯れはちす
おーたえつこ