つかぬこと聞いて海鼠の噛みごたえ
寒雷やガラスのペンに詩の記憶
手荷物に喪服おむすび雪の晴
トンビと行き交う北陸線ホーム
冬星や華やぐ遺影紅ほのか
辻水音
元日の口紅赤く生きてゐる
たましひのゆらととどまるお正月
贈られし詩を読んでゐる淑気かな
読み初めや逆さ睫毛に邪魔されて
金星のすぐそこに在る冬テラス
はしもと風里
枇杷の花優しい言葉こぼしけり
ジュール・ルナールの詩と炬燵に入る
冬銀河詩になる前の言葉たち
実南天毎朝鳥のお客様
日脚伸ぶストンアートの魚たち
波戸辺のばら
写真 のばら・北山杉
冬の朝薬三兄弟をのむ
震度三怖かった粕汁すする
金のペン黄金にする冬日差し
メール一通放っておいて冬の雲
ストーブにのってヤカンが話し出す
林田麻裕
二人居の丸い重箱雑煮餅
じいちゃんは酒や俳句やお正月
恋人もすでに爺さんお正月
アクロスチックなんてなんぞやもう三日
お互いに病みたる友と初電話
火箱ひろ
制服を干して仕事の納めとす
カーテンの隙間しらじら姫はじめ
爪切つて厨あれこれ五日かな
暗がりに冬の蛤きゆんと鳴く
寒富士に迷ひ断ち切り空仰ぐ
松井季湖
写真 季湖・制服
冬の森詩人のうしろ姿消え
冬灯やさしき言葉送りたし
たましいをひとつ加えて冬銀河
着ぶくれて舞台を「箱」と呼ぶ男
人日を行く人来る人迷う人
おーたえつこ
恋敵だった男の年賀状
二日はやテニスボールを拾う役
検査待つ椅子に沈みぬ水仙花
松過ぎのうぬぼれ鏡のおれの顔
門限に五分遅れた黒海鼠
たかはしすなお
初雪のふわりふわりと詩片
言葉から言葉へ窓の雪積もる
白玉の硬くやわらか初句会
豆餅へダウンコートの列の外
足音は兜山から二月来る
つじあきこ
写真あきこ
・寒夕焼
(鴨川デルタ)