みんみんみ〜ん歯医者であ〜んと口あけて
夏休み魚食うては骨絵描き
灯かり消し父母送る大文字
ちんちろりん眠る赤んぼ眠る婆
静かなり母にも婆にもならず秋
火箱ひろ
立ち食いを猫に見られている夜店
葭簀して色とりどりの招き猫
素っ飛んだ記憶の行方大西日
八月のすみっこにいてチェロを聴く
失せ物のみつかる呪文星月夜
おーたえつこ
盆花の中の一輪ははのやう
水塔婆一本増えて魂祭る
ちちははに迎へ団子のちよといびつ
寂しさは苧殻の箸の軽さかな
別れ難し送り火しばしくすぶつて
松井季湖
写真 季湖・迎え団子
刺青が日日草に水をやる
下駄履いて線香花火を爺ちゃんと
天の川歩けば痛い踵かな
飼葉桶蟷螂大きく鎌を振る
進まない和平交渉かなかなかな
たかはしすなお
盆猫の幼なじみに会いに来て
真っ直ぐな魚の脊椎秋日ざし
味の素ぱぱっと八月十五日
月今宵チキンラーメンでいいよね
マドラーを回す一人の秋の空
辻水音
水底へそっと手のひら原爆忌
倒立と着地僕らの夏休み
今朝の秋宇治線いつも一両目
白和えのような家族よ盆の日々
森の中で見つけた絵本秋涼し
つじあきこ
写真 あきこ・花背松上げ灯籠木立つ
水の音たのし真夏のキッチンは
夏の月付き合はさるるショットバー
うつらうつらと映画観てをり夏の果
初秋の姿見に傘寿のわたし
薔薇を捧ぐ五十回目の月命日
はしもと風里
二千円札を発見秋の朝
秋の風お箸のような脚の人
母さんの化粧は長い秋の空
姫一人男が二人涼新た
台風やおならも聞こえないような
林田麻裕
理科室の人体標本大西日
定食屋サーフボードを立て掛けて
若者へ詩人の奢る生ビール
新しい口紅を引く今朝の秋
秋風に素っぴんの頬撫でられて
波戸辺のばら
写真 のばら・菜園のオクラ