繭玉抄

林田麻裕

 

和尚さんにほっとするのかお話にほっとするのか深い息吐く

 

笑っても怒っても絵になる人よその黒髪に触れていいかな

 

「負けるな」とドラマの人は言うけれど勝つのは私には似合わない

 

運命の人は英語の話者かもな高校時代の教科書開く

 

フランス語講師の笑顔優しくて一番高い辞書を買ったわ

繋がる五七五㉑

 

      おーたえつこ   消しゴム版画 辻 水音

 正岡子規たちが連句をするなら、夏目漱石もするだろう、そう思って、夏目漱石全集を探し

たら、ありました。歌仙が一つと、あと、断片が少し。

 まず、歌仙。

 

 漱石と、高浜虚子と、四方太。四方太は坂本四方太という、子規や虚子の門下、「ホトト

ギス」の俳人です。本名は「よもた」俳号は「しほうだ」です。

三吟の屋をゆるがす野分かな     虚子

(三吟は三人で連句を詠むこと)

 

 こういう虚子のご挨拶句って上手いなあと思います。

 

萩しどろなる水の隅々       四方太

(しどろは乱れていること)

後の月びっこの馬にうち乗りて    漱石

わからぬ歌も節の可笑しき     虚子

年々に淋しくなりし熊祭       四方太

九郎の館は迹ばかりなり      漱石

静舞今も残れる曲舞に        虚子

(曲舞、くせまい、幸若舞『しづか』)

 

黄金作りの太刀佩いて立つ     四方太


鉄網の中にまします矢大臣      漱石

(神社の随身門に安置される二神のうち門守の神)

御鼻を食ふ虫も百年        虚子

土用干し顔輝が軸を見暮らしつ    四方太

(顔輝、中国元代の画家)

眠い時分に夕立が来る       漱石

燈台を今日も終日守る身にて     虚子

浦の漁師に蟹貰ひけり       四方太

恵比寿屋に娘連れたる泊り客     漱石

朧の月に三人の影         虚子

花更けて御室の御所を退るなり    四方太

(御室の御所、仁和寺のこと)

 

銘をたまはる琵琶の春寒      漱石


(漱石の句に、「琵琶の名は青山とこそ時鳥」 「経政の琵琶に御室の朧かな」などあり。

また、『虞美人草』に、「御室の御所の春寒に、銘を給はる琵琶の風流」とある。) 

入唐を思ひ立つ日に舟出して     虚子

反吐を吐きたる乗合の僧      四方太

意地悪き肥後侍の酒臭く       漱石

切って落とせし燭台の足      虚子

絵襖に夜な夜な見ゆる物の怪     四方太

百日紅の赤過ぎるなり       漱石

白壁に名主の威光ほのめきて     虚子

村の出口に立つる高札       四方太

落人の身を置きかねて花薄      漱石

うそ寒き夜を駕籠に乗るなり    虚子

関守も今宵の月を眺むらん      四方太

歌心ある髷の結いよう       漱石

 

  発句にて恋する術も無かりけり    虚子


 漱石がどことなく色っぽい句を詠んで、次は恋句を詠みたいところ。でも、虚子も恋句は

苦手なのかな?次の、四方太も妹の婿であっさり恋離れしちゃった。

 

妹の婿に家を譲りて        四方太

和歌山で敵に遭ひぬ年の暮      漱石

助太刀に立つ魚屋五郎兵衛     虚子

(魚屋五郎兵衛、一心太助みたいな人)

鷹の羽の幕打渡す花の下       四方太

(鷹の切斑をかたどった家紋のついた幕)

酒をそそげば燃ゆる陽炎      漱石

 

  全体的に、子規と虚子の連句よりも読んでいて面白い気がします。漱石が小説家的な感覚

 を持っているからでしょうか。私のそういう先入観なのかな?

  虚子は漱石のことを尊敬しつつ、俳句力についてはさほど評価していません。その辺の良

 い距離感も、この歌仙のなんとなくくつろいだ感じにでているのかもしれません。

季湖ワールド  見つけた花々

   私はここにいます。名前もちゃんとあります。

          写真 季湖

季湖さんがたくさんの花を送ってくれました。私はほとんど名前を知らないかな。

少し調べたけどわからない。皆さんも調べてください。そして教えてください。

  ヒメオドリコソウ            ウシハコベ(?)              ウシハコベ(?)

  キュウリソウ(?)葉をもむとキュウリの匂いがするそうだ。          ヒメツルソバ(?)  

  ヒメムカシヨモギ(?)        カラスノエンドウ          カラスノエンドウ&タンポポのワタ

  ヘビイチゴ(?)         トキワハゼ or ムラサキサギゴケ     キランソウ

                                          別名 ジゴクノカマノフタ               

  ハハコグサ             マツバウンラン(?)             ヒメウズ(?)

 ヒメオドリコソウ&ツバキ       オオイヌノフグリ            なんだろう?

 花の名前を調べなくてもわかったら、嬉しいだろうな。

 万太郎にはなれないな。