大雨のずっくずぶずぶ蛇穴に
むすんでひらいて手をうって冬ですよ
シフォンケーキぱふぱふ冬の空気ぱふ
湯気立てて赤いケトルが我を呼ぶ
冬きざす琉球グラスは海の色
たかはしすなお
初霜や大きなアルミ弁当箱
三人の集団登校初氷
ジャングルジムの冬日子がすずなりに
冬川へ顔を落とせば揺らぎをり
陸橋真下大音響の冬
辻水音
座るより歩く晩秋の森は
リコーダー飛び出している小春
もう一人増えて冬日のあたたかな
香袋匂って寒椿咲いて
時雨来る赤い手帳を買いました
つじあきこ
写真 あきこ・正伝寺庭園(枯山水と借景)
ハロウィン窓辺に黒い猫がゐる
強くなりたい十一月の空気吸ふ
冬木立深紅の杖の似合ふひと
喪の家の窓に動かぬ冬の蝶
湯気たてて記憶のハコが片づかぬ
はしもと風里
手袋のままで拝んでいいですか
白い息ほかしてほかしてこんにちは
雪こんこ電気自動車充電中
冬の川龍の鱗のキラキラと
ラーメンにふぁさっと葱の小口切り
林田麻裕
こんな日は野菊の風に吹かれたい
小春日やベンチがあればすぐ座る
時雨来るあの神の山辺りから
友まじめ私ふまじめ冬はじめ
魯山人の器に活けて石蕗の花
波戸辺のばら
写真 のばら・八ケ岳
二十年ねこもこたつもいなくなり
赤んぼの心音を聞く冬の朝
小春日や散歩ついでに出す手紙
友と逢う鎖骨をかくすショールふわっ
冬の月もう五十年二人きり
火箱ひろ
なんてんの実の下にねこどこのねこ
冬夕焼かげ細ながくおじぎする
ドア開くかわいい冬のほっぺかな
冬浅しおりんの響き消えるまで
小春日を淋しい金魚泡ぷくと
おーたえつこ
扇風機仕舞ふ猫つ毛だつたねお母さん
今日を生き明日また逢はむ冬の蝶
冬蝶や薄ら日さへも重たかろ
冬凪や釣り人ひとり杭のごと
パン工場は眠りのじかん山は雪
松井季湖
写真 季湖・琵琶湖の釣人