掃除機のコードするする爽やかに

 

とんぼ来てローゼルの実の赤さかな

 

耳鳴りと混ざり合っては虫の声

 

くつしたの穴が気になる月の客

 

きつつきの去って老樹のしんとなる

 

 おーたえつこ 

草の花はずんで歩く柴犬と

 

さわやかや改札抜けて手をつなぐ

 

砂山に穴掘る遊び秋高し

 

イエス似の神父の腕秋の雲

 

ハロウィンのうさぎの耳が落ちている

 

  たかはしすなお


挨拶のさわやか公園清掃日

 

虫の声連れてコンビニまで二分

 

胡桃割る二人でいる時の無言

 

秋の灯の整理箪笥の小引き出し

 

続編のように秋野を旅人は

 

   つじあきこ

          写真 あきこ・杜鵑草と石蕗 


東京は晴れていますか鳳仙花

 

味噌醤油並ぶ離れや穴まどい

 

門限はとおに過ぎけり胡桃落つ

 

すいっちょや身構えているのは私

 

干し竿を一段下げて鰯雲  

 

 辻水音

長き夜をからだの痛む友思ふ

 

ゐないことに馴れたくなくて林檎むく

 

爽やかや水屋に萩焼九谷焼

 

ホスピスの東の空にスーパームーン

 

胡桃割る叶わぬ夢をふたつ持ち

 

  はしもと風里


 

歯科内科整形時々花野

 

秋麗をガザの空にも届けたい

 

ダム底に沈む一村胡桃割る

 

虫の闇猫の居どころ確かめて

 

爽やかに街角ピアノ連弾で

 

   波戸辺のばら

                        写真 のばら・奈良高畑「たかばたけ茶論」          


電車内に花は無いよ秋の蝶

 

裏口はタバコの香り秋の昼

 

大股で秋の雲から秋の雲

 

ひよどりと頭のかゆいおじいさん

 

リュック背負って夢を背負って秋の朝

 

       林田麻裕

穴惑い穴はまだ夏まだ遊ぶ

 

水道の水なまぬるく虫の声

 

虫の声空き家になっている実家

 

ローゼルの蕾や花・実数え秋

 

秋空や今日も元気な姉の声

 

     火箱ひろ


 

泡立草わたし厄介者かしら

 

箒星探す幽き虫の音に

 

だんまりの石蕗の蕾をちよとつつく

 

無人の生家金木犀の香る頃

 

茶の花や顔を上げよとちちの声

 

  松井季湖

   写真俳句 季湖