おとなしい犬が鳴いてる祭かな

 

夏料理どんどんお腹減ってくる

 

バラの坂パスタの店に立ち止まる

 

青嵐そうだドイツに行かないか

 

パセリぱくぱく山羊ってこんな気持ちかな

 

   林田麻裕

夏山を大鍋背負い新入生

 

星・焚き火・海鳴り・夏の合宿所 

 

歩行器を蹴って赤子の汗・涎

 

七月の朝のむにゃむにゃまだ眠い

 

年上の友のことばが沁む白雨

 

     火箱ひろ


朝曇しよつぱさ足りぬクラッカー

 

泰山木一花も咲かぬ年なりけり

 

汗ばむやバリウムほどよき甘さなる

 

冷房や声甘やかな検査技師

 

熱帯夜明けて探すや抱き枕

 

  松井季湖

     写真 季湖・味しみ茄子の唐揚げ


梅雨深し黒々光るアスファルト

 

夏の大三角形を夜の鳥

 

足裏の小さな痛み桜桃忌

 

泣きながら歩くこどもや夏木立

 

土砂降りをひたすら歩く帰省かな

 

 おーたえつこ

 

救急車止まるコンビニ星涼し

 

遠浅の海はゆるりと夕映える

 

歩かない子を抱きあげる腕に汗

 

白南風やLINEで届く招待状

 

ケイくんのトマトもナスもへそ曲がり

 

     たかはしすなお

 


緑蔭の椅子に恋人のかたち

 

そら豆のそらが大好き秘密基地

 

夫の靴間違えて履く山開き

 

山あいの学校きょうはカレーの日

 

宵山の通行規制恋もまた

  
   つじあきこ

             写真あきこ・通りすがりの青無花果

 



夏をぐるぐる海沿いの遊園地

 

素足くすくす防波堤を歩く

 

マネキンにステテコ私のゆるブラ

 

蝉が鳴いてるねそうだね腰伸ばす

 

まだ出来ることがたくさん胡瓜もむ

 

 辻水音

星涼し箸置きに箸収まりて

 

夕焼けを来て置いてゆくいなり寿司

 

天国に満つる安らぎ夏の星

 

吐く息の甘酸つぱくて昼寝覚

 

猛暑酷暑いのち削られゆくような

 

 はしもと風里


 

かたつむり乗ってみたいな玉の輿

 

七月を歩幅大きく北大路

 

寄り添って高原バスの夏帽子

 

仁淀ブルー北斎ブルー夏の空

 

大夕焼エラーで終わる甲子園

 

     波戸辺のばら 

          写真のばら・木賊のなかの露草