前カゴの春大根がやって来る
代わるがわる車椅子押す花見頃
眠いのねさくら色なるおんぶの児
張り紙に写経のすすめ胞卵期
席ゆずる我も老人春暑し
辻 水音
待つことの楽しさ不安春の風
四十九日木の芽草の芽濡れてをり
桜冷え義弟からの長電話
花のもと明日もわたしは変らない
春の昼チクタク亡き娘想ふとき
はしもと風里
桜咲くとにかく明日の米はある
このバスは桜の寺へ行きますか
万歩計二万二千歩桜二分
春灯しわれ待つ母がいつもいた
ふわふわと今日を飛んでる紋白蝶
波戸辺のばら
写真のばら・彦根城と桜
バス停にぽつんと一人春時雨
待ち合わせに一番乗りや木の芽風
幸せの形の一つチューリップ
口笛の上手い男と春の昼
雪柳降りるつもりのない駅の
林田麻裕
バラの芽のバラの漢字が書けますか
蝶々のたのしいときは十日ほど
鴨川の春のうららの木のベンチ
うたた寝にやすらい祭の鉦の音
父母老いて縁側にいる春の夢
火箱ひろ
あちこちに痛み抱へて桜は葉
研ぎ立ての包丁軽し囀れる
囀りやうづ高く盛るお仏飯
花楓ほのほの母の百箇日
みづいろの紐垂れてをり燕の巣
松井季湖
写真季湖・花楓
あしたへと桜の闇を通り抜け
おとといもきのうもきょうも春キャベツ
夕暮れのランプに透ける春玉子
老人ホーム廊下の先の春夕焼け
新入生眉毛がかゆい目がかゆい
おーたえつこ
写真えつこ・新一年生
スプリンググリーン重ねて山笑う
フルマラソン走るわたしに花吹雪
ショベルカー原っぱの春掘りかえす
老いること楽しと笑う春ショール
養花天平和な国に老いていく
たかはしすなお
写真すなお・穂谷新池のさくら
真剣に遊ぶ真昼のもんしろ蝶々
中継の国会審議わらび餅
たんぽぽの規則正しい老後です
諸葛菜ふつうに歳をとりました
春灯を残して眠るまで読書
つじあきこ
写真あきこ・京都府立植物園