冬うららケーキ屋さんの赤い屋根

 

冬晴れの光の中の松葉杖

 

手袋を外したミッキー見たくない

 

自転車の母が娘がくしゃみする

 

暖房ぬくぬく猫の足音が聞こえる

 

 林田麻裕

明けましてチンしてピッピッお正月

 

比叡山眠る頂き白い夢

 

せせらぎは揺りかご浮寝鳥ゆらら

 

雪みぞれ草間彌生のてんてんてん

 

松明けて来るニッセイのお姉さん

 

 火箱ひろ


 

排便有りの〇印付け暦果つ

 

ひめはじめ始発遅れてゐるらしき

 

招き猫磨いて仕事始めかな

 

一月十七日介護の粥炊きぬ

 

幕間のアドレス交換初芝居 

 

 松井季湖

    写真・季湖


年の市あっちにうさぎこっちにうさぎ

 

去年今年宇宙旅行を売り出し中

 

福袋から食パン菓子パンクロワッサン

 

山ねむる「バナナ埠頭」へ徒歩七分

 

コンチェルト号ぽっかり浮かび冬深し

 

 おーたえつこ

若菜野やはちきれそうなふくらはぎ

 

雪ですとたった三文字一筆箋

 

人日の切ったりはったり忙しい

 

ぽん菓子のキャラメル味や初御空

 

寒昴近く遠くに爆撃音

 

 たかはしすなお


 

青空へ二枚三日の凧揚がる

 

時々は無になる時間蜜柑剥く

 

セーターのふっと毛玉のように虫

 

雪になるそんなこころと飴玉と

 

慣性の法則春が来るまで眠る

 

    つじあきこ 

                  写真あきこ・雪の賀茂川

 

 


知らぬ子に笑顔を返し日向ぼこ

 

初夢の頭とんとんしてくれし

 

寝積むやキラキラ光る箸袋

 

「いい走りですねえ」瀬古さんの襟巻

 

船便の箱の凹みや久女の忌 

 

辻 水音

 

 

極月の頭をほぐすウヰスキー

 

眠らねば見られぬ夢や冬桜

 

初夢のうしろ姿を見失ふ

 

冬天や明るいですか天国は

 

ちらり初雪恋はキケンと見出しかな

 

 はしもと風里


 

垂直に吉川晃司のコートの背

 

冬霧の晴れて入江の村目覚め

 

雪嶺の向うおいしいパン屋さん

 

蕪スープほろりわたしが溶けてゆく

 

夭折のひとの墓前の冬菫

 

   波戸辺のば

                    写真のばら・大好き