冬たんぽぽ母は幸せなんだろか
加湿器の音にやすらぐ介護かな
夢ひとつ捨つやたゆたふ冬の星
凍星やはたらき過ぎる第六感
私はわたし限りの月の蒼穹に
松井季湖
写真俳句 季湖
とんとんと眠りのリズム雪の夜
木の声に耳かたむけて火焚鳥
後悔のころげて落ちて冬の闇
歳末のカステラの耳山盛りに
忘れたくない思い出のある忘年会
おーたえつこ
炬燵猫ぽんと叩いて晩酌す
素うどんの山盛りのネギ外は雪
賀状書くバランス悪き文字踊る
終い弘法歯医者の椅子に座らされ
北浜の少し手前の夕時雨
たかはしすなお
時雨来る背中辺りに母がいる
巻貝は右巻き左手で剥くみかん
地下鉄を英語フォントに十二月
綿虫を連れてすきすきのバス
じゃんけんで今日は大人のクリスマス
つじあきこ
写真 あきこ・85歳の友のクリスマス
息白し斎藤さんのスーパーカブ
弁当へ赤いウインナ風花す
散らばりて写生大会枯野原
極月や売れるつもりを積み上げて
クリスマスごきぶりほいほいを捨てる
辻 水音
冬を掴む観音開きの扉を開けて
「ただいま」は大きな声で冬の星
この部屋に充つる想ひ出クリスマス
ホットワインこころの揺れを愉しめず
指先が余る亡き子の手袋は
はしもと風里
十二月八日赤いチラシを手渡され
みかんみかんいつも家族の真ん中に
蜜柑盛る子ども食堂テーブルに
あっ今落書きしたい冬青空
白杖の音の消されて雪の朝
波戸辺のばら
写真 のばら・温室
電車乗り過ごしてマフラー巻き直す
ほっぺたに飴入れ年賀状を読む
ストーブやおいしいお店教え合う
救急車時雨の音をかき消して
木枯やわんと吠えたい僕がいる
林田麻裕
眠剤の切れてはじまる霜の朝
鴨川の師走陽だまり昼ごパン
カフェですが加茂の酢茎を売らんかな
冬うらら友達みんな婆ちゃんに
湯あがりは母といた日のちゃんちゃんこ
火箱ひろ