パラソルくるり来年も会へるやう
たっくんに伝へる夏カレーレシピ
蝉時雨この世あの世を鳴き競ふ
壊れゆく地球に住みて髪洗ふ
秋立てり心に小さきキズ持ちて
はしもと風里
黄花コスモス一つ一つにハイタッチ
下ごしらえを一旦やめて秋の空
この秋の風はチャーハン一択だ
犬と一緒に薄い目をして秋の海
風船葛あんまい風を閉じこめて
林田麻裕
原告は向日葵他に夏の虫
虹二重心にいつも反戦旗
秋の灯に『火垂るの墓』を再読す
園丁の影の揺らめく晩夏かな
未来だけ見ていた頃のいわし雲
波戸辺のばら
写真 のばら・天ケ瀬ダム
初盆やだあれも住まぬ家の鍵
亡き義母(はは)は従軍看護婦修羅の盆
叔父若く遺骨無き墓カナカナカナ
電話きて岡山弁になる晩夏
赤んぼの健ちゃんパパになって夏
火箱ひろ
ウクライナのダンサー踊る夏館
平和とはなんと儚い日向水
うつくしき平和憲法昼寝覚
ゼロという地点のありて夏の海
八月の波打ち際に立っている
おーたえつこ
むかし河童が住んでゐた川とほいかづち
墨痕の乾くを待つや日雷
食介の匙置く八月六日朝
かすてらのざらめきらきら秋立ちぬ
母の髪ととのへ父に門火焚く
松井季湖
口先の勝手に動くきゅうりもみ
生身魂食べる力を温存す
炊き立てのごはんいただく今朝の秋
八月は勝手口よりどかどかと
星飛んで波打ち際の海螢
たかはしすなお
冷麦や兄姉みんな生き抜ける
夫よステテコがよれよれじやないか
夏深む終活なんていふものは
夢二描く足白々と終戦忌
台所の窓を全開今朝の秋
辻 水音
八月の風に吹かれて万国旗
黒葡萄うんという前に食べる
あってまたまたね朝顔つるの先
バッタ飛ぶ背中は広い方が好き
送り火の川音草木のざわめきと
つじあきこ
写真 あきこ・大文字