うたふやうやよひやよひと来る弥生
春の夜をころんと転げ手毬寿司
春の鴨気になるひとができたのね
浅蜊泣く最後のキスはいつだつけ
瓔珞に触れれば金色(きん)の春埃
松井季湖
写真俳句 季湖
末黒野をぱふぱふオレンジ色の靴
黒土に薄青色の種蒔いて
蝌蚪の黒赤いバケツに掬い上げ
「ドリームノート」を書いている人花菜風
水温む歯医者の紙コップの匂い
おーたえつこ
幾千年機織りつづけ梅の空
あちこちに行列あふれ街は春
おじさんの売るはちみつや日永し
ペテン師の背筋伸びゆく木の芽時
早春のさくらの幹にふれてみる
たかはしすなお
川音と真っ赤なソファと白梅と
春の日の金魚一匹だとしても
今ごろは春満月の真下です
父さんをまた間違えて春の鴨
山桜つり橋揺らしても遠い
つじあきこ
写真あきこ・梅宮大社神苑
一斉に押し出されてはしやぼん玉
少女らの春よトントントウシューズ
よそ行きの服は水色雛あられ
蟇穴を出づ湯上りのさくらいろ
春光のドア少し開く授乳室
辻 水音
雛包む白布に遺る娘のなまへ
目薬のまなこ溢るる春の空
菜の花や無邪気な黄色日の匂ひ
ふいに蝶きて触れたかりふれたかり
気がかりのフタの閉まらぬ夕桜
はしもと風里
佐保姫の使用中です更衣室
夕霞スキップで来るおばあさん
お供えはとらやの羊羹桜もち
リハビリの試歩つくしからたんぽぽへ
れんげ野にプライドなんて捨てちまえ
波戸辺のばら
写真のばら・河津桜
雪柳スタンプラリー制覇する
花の昼飲めないお酒出されても
花菜風きゃしゃな眼鏡にきゃしゃな眉
人見知りしない性格花の雲
赤ちゃんがふてくされてる梅苑よ
林田麻裕
雛しまう母の手子の手ひ孫の手
穴を出る蟇も婆あばもどっこいしょ
あと三針刺繡の春野できあがる
花粉症くしゃみしいしいけんけんぱ
膝が痛た腰痛たふたり野に遊ぶ
火箱ひろ