繋がる五七五⑩

      おーたえつこ   消しゴム版画 辻 水音

 宗祇の時代から、また百年ほど経ったころ、里村紹巴(さとむらじょうは)という連歌

師が登場します。この人も教科書に載っていたかもしれません。安土桃山時代、貴族や戦

国大名の懐に入り込んで、権力に近づくといった千利休によく似た生態を持っていたよう

です。

 茶人たちともよく連歌会を催していたそうです。茶人たちは和歌を嗜むことはあまりし

なかったようですが、連歌には親しんだのです。古田織部は紹巴の連歌に参加していたよ

うです。

 茶会も連歌会も武人の教養的なものであり、人脈作りや密談、談合の場でもあったので

しょう。

 

  二本手に入る今日のよろこび     紹巴

  舞い遊ぶ千代万代の扇にて      信長(織田信長ですとも!)

 

 紹巴がご機嫌伺いに扇二本を献じて、二本、つまり日本を手に入れると寿ぎの句を詠み掛

けたら、信長がいかにもいかにもと返したというエピソードですが、これはどうやらウソ話。

信長は茶道に熱心だったわりに文学にはほとんど興味がなかったらしいし。

 

 でも、こういうふうに、有力武将を訪ねては、戦勝祈願連歌会を献上していたようです。

 豊臣秀吉との逸話もあります。

 ある連歌の座で、秀吉が、

 

 奥山にもみじ踏み分け鳴くほたる   秀吉

 


と詠んだとき、紹巴は文句を言いました。蛍は鳴かないと。秀吉が機嫌を損ねるのを見た細

川幽斎がとりなしてその場を収め、秀吉と争ってはいけないと紹巴を戒めました。さて後日、

またもや秀吉が、

 

  谷かげに鬼百合咲きて首ぐなり(ぐにゃり)   秀吉

 

と、へんてこりんな句を作ったときには、紹巴、「わが恋は松を時雨の染めかねて真葛が原

に風さわぐなり(さわぐにゃり)」という古歌もありますし、素晴らしい句ですねと褒めた

とか。おかげで秀吉はご機嫌でしたとさ。ええ~ほんまかいな⁉ですね。

 続いては、明智光秀との連歌会。これは確かにノンフィクション。

 

時は今あめが下しる五月かな     光秀(明智さんです。幽斎さんとも仲良し。)

(今こそ、明智の所属する土岐一族の天下に打って出るときだ)

水上まさる庭の夏山         行祐(威徳院住持)

花落る池の流をせき留めて      紹巴

 

 本能寺の変直前の「天正十年愛宕百韻」と呼ばれる連歌の会。紹巴は、こんなときにも立

ち会っていたのですね。表向きは、信長に命じられた毛利討伐の戦勝祈願の会でしたが、本

能寺の変のあと、紹巴も謀反に加担したんじゃないかと疑われたとか。確かに、発句は何や

ら意味深。

 真ん中のほう見てみましょう。恋の句の部分です。

 たたく戸の答へ程ふる袖の露      紹巴

(ドアを叩いたのになかなか答えがないから濡れちゃったよ)

 我よりさきにたれちぎるらん      心前(紹巴門下)

(誰か、私より先に男が来たな)

 いとけなきけはひならぬは妬まれて   昌室(紹巴門下)

(私に対してかわいげのないのは他に男がいるからか。妬けるぞ。)

 

 といひかくいひそむくくるしさ     兼如(紹巴門下)


(とかなんとか、あなたも裏切ってるでしょ。辛いのよ。女性側の気持ちに転じ。)

 度々のあだの情けはなにかせん     行祐

(いつもそうよね、その場限りよね)

 たのみがたきはなほ後の親       紹巴

(義理の親は頼りにできないもんだ。上手いこと恋離れ。)

 

 百年前の連歌とは、だいぶ様子が違いますね。滑稽な雰囲気もあり、小難しい言い回しも

ない。笑い声やヤジなども聞こえてきそうです。

 光秀に関わる謀反の疑いからはなんとか上手いこと逃れた紹巴でしたが、やがて秀吉の

晩年、秀吉の甥の秀次と連歌会を持ったために、秀次の謀反(言いがかりですね)に連座し

て、都から追い出されました。連座、文字通り…

 秀吉にとっては、自分に逆らったり、逆らう可能性のある人たちと会合し、敵に情報を流

したりするかもしれない茶人や連歌師は邪魔だった。千利休は切腹でした。紹巴は利休ほど

反抗心を見せなかったのでしょう。利休より権力に弱かった。逆に言うと、利休ほどの権威

も社会的影響力もなかったのかも。

 

参考 「連歌史 中世日本を繋いだ歌と人びと」奥田勲著

 

「連歌集」島津忠夫校注

   繭 玉 抄

君がいつ光を失ってもいいくらいにいつも綺麗でいよう

 

お医者さんに綺麗ですって言われたわ顔じゃなくって血液の方

 

恋心標本にして眺めたい避難するとき持っていきたい

 

あなたからもらった言葉守りたい体とっぷり湯に沈めるわ

 

 図書館の詩集を全部読む頃に私は君に出会うのだろう

 

       林田麻裕

  季 湖 ワールド

     かまきり       写真 季湖

 

 

玄関先で「お客さんが来てはるわ」と夫の声。

 

出てみると・・・あら~~、いらっしゃいませヽ)/ 


 

 

他のカマキリの写真もあります。

 

楽しんでください。

 

いつもだが、虫たちへの愛が感じられる。

 

そして来年もこの庭で沢山のカマキリが

生まれるのだろう。