朝顔やきょうもおいしい朝ごはん
 

 赤ちゃんがこぶしを開く小鳥くる

 

 まっさらな自転車秋の夜をくるり

 

 さみしさは君のやさしさ雲は秋

 

 継ぎ接ぎのこころ広げている秋夜

 

     つじあきこ  

            写真 あきこ・花脊


笹舟のくるり接岸秋日和

 

補助輪を取つてもろうて羊雲

 

葛の花国土交通省の杭

 

三叉路のひとつは海へ秋の蝶

 

手仕事の指だこに熱獺祭忌

 

 辻 水音

やさぐれる時間などなし曼殊沙華

 

自己愛をつらぬき蓮の実は飛べり

 

草の花つくづく老いてわたしの手

 

おしよせるさみしさ無花果煮てをれば

 

月の光にグランドピアノ鳴りだしぬ

 

 はしもと風里


 

バロックパール九月の耳を揺れやまず

 

あきのてのひらひらひらとさようなら

 

水晶体まっさらにして天高し

 

野紺菊あの音もしや軍靴では

 

やさぐれた男と猫と月の夜

 

 波戸辺のばら

      写真 のばら (ヤブラン)


医者の二重まぶたやさし秋の昼

 

レジ係にはレジの技秋の朝

 

爽やかや彼女はすっぴんもきれい

 

黄花コスモスパチンコの父と別れる

 

抱きしめるためのこの腕虫の闇

 

 林田麻裕

先生もいまはおっちゃんすいっちょん

 

萩咲いて埴輪の猫が笑ってる

 

晩夏光ねむいねむたい寝てしまう

 

黒葡萄ちゅるっと夜の隅吸うよ

 

案山子まだのっぺらぼうで横たわる

 

 火箱ひろ


 

雨あとの風の重さよ八月尽

 

あれやこれややうやう癒えて涼新た

 

コロナ籠りさなかや迎へ撃つ台風

 

狐花一難去らずまた一難

 

柿剥くやノボさんいくつ食べますか

 

松井季湖

         写真 季湖

 

 


新涼や餃子を包む指の先

 

朝顔の咲き終わってはにゃあと鳴き

 

柿あかあかカカカカカカと膝笑う

(季湖さんのかまきりくんたちへ)

秋の蜂飛び立ち羽音残しけり

 

かまきりの大人の顔でキメ顔で

 

 おーたえつこ

朝顔の花殻摘みて反抗期

 

夜半の月接続列車の白い影

 

今すぐに君に送るよいわし雲

 

カリンバをつま弾く指や夕月夜

 

接吻はKISSと書いて流れ星

 

 たかはしすなお