お世辞などよく聞きわけて馬の耳
しんとして入道雲が高すぎる
「ごはんだよ」白雪姫が呼ぶ夕焼け
青葉木菟双眼鏡の先は闇
月草を手繰れば水の匂いかな
おーたえつこ
南吹くショートヘアにイヤリング
肩で汗ぬぐい荒縄持ちあげる
うきうきと京都祇園のもどり梅雨
長刀鉾の矛先に今雨粒が
アンパンマンの浮き輪だけある潮だまり
たかはしすなお
グリンティーの赤いストロー夏至の昼
初蝉に大きく窓を開けなくちゃ
夕焼け小焼け晴ちゃんに似たお父さん
談話室の光の窓や蝉の声
メロン切る中途半端な五等分
つじあきこ
写真 あきこ「祇園祭 函谷鉾」
「ごみ箱」あさる明易のパソコン
薬袋の百三日分金魚玉
蝉鳴くやトウバンジャンを効かせたる
かさぶた剥がるる四万六千日
バリカンを握る父の手縁涼し
辻 水音
カーネーション溢れてゐたり子の墓に
初蝉やわたしは今日も生かされて
照明を絞つて涼し高島屋
赤い帯ほどいたやうな夕焼けかな
留守電にのこる子の声星涼し
はしもと風里
大の字の大中小と寝る夏野
とまととまとわたしを元気にする真っ赤
夏草食む馬の目深くて静か
菩提寺の緑陰会議三姉妹
夕焼け小焼け捨て猫抱いて二人の子
波戸辺のばら
写真 のばら「青空」
ソーダ水盛り上がっている喉の奥
白いサンダル糺の森を踏みしめる
玉砂利で山を作る子揚羽蝶
おすすめの本を読み合う緑雨かな
Tシャツの先生と会う河原町
林田麻裕
夏空は海/草原は草の波
夏山の星一握り持ち帰る
比叡より風下りてくる昼寝覚め
眠れない蝉ぶっつかる夜の散歩
コンチキチンもっとご飯を噛みなさい
火箱ひろ
近江に生まれ近江に育ち青田風
夏萩のこぼれてだらだらと微熱
トメィロゥと孫に正され食ぶtomato
母にまだあり夏布団蹴る元気
蚊取線香最後の灰の落つところ
松井季湖
写真 季湖