青柳風をはらみて風放つ
二階から犬の名を呼ぶ芒種かな
梅雨晴るる星取表の最終日
焼酎や聴くたびに泣く歌ひとつ
泣きだすも泣きやむも急夏の宵
辻 水音
九人の他人の仲間風薫る
こいつはねポンポンダリアになるはずよ
老鶯やおかあちゃあんと啼くことも
アオバズク鳴くから青いボールペン
三角四角五月の言葉サーブする
火箱ひろ
てまり花ゆらゆらゆれて海明るし
夏みかん苦いところを噛んでいる
これまでのこととしだいを豆ごはん
（季湖さんの虫たちの世界に二句）
指の先小さい蜘蛛やうすみどり
蛇の衣いま脱ぎたての脱ぎ捨ての
おーたえつこ
松葉海蘭ゆれてやさしくないわたし
野いちご摘む私ときどき左きき
山椒の芽パチンと叩き娘に伝ふ
絹さやてふやさし響きを母の手に
できること数へ五月の空青し
松井季湖
写真 季湖 （松葉海蘭）
ボール蹴る声を吸い込むこいのぼり
祖父編みし母の竹かご青紅葉
新樹光バージンロード爺ちゃんと
おかっぱで黒いスーツの男・夏
青葉騒ぽっくぽくぽく鞍が鳴る
たかはしすなお
乗り換えの電車はみどり初夏の風
二年生で習う母の字五月来る
丸結びほぐす指先聖五月
野いばらの花よのばらさんみーつけた
坂の上まで青紅葉までフリーパス
つじあきこ
写真あきこ（宇治興聖寺 琴坂）
若葉風やさし未熟なたましひに
念ずればそこにゐるらし薔薇香る
母の日や亡き娘を思ふ日となりて
三回忌五月の空気吸はせたき
薔薇香る覚めない眠りの途中かな
はしもと風里
梅雨の陽を膝掛けにしてテレビ見る
冷房はキンキン化粧水とろり
片陰に入ればケーキ焼く香り
夏暖簾猫の主が顔を出す
マリーゴールド辿っていけばお寺かな
林田麻裕
泳いでも泳いでも平和が遠い鯉のぼり
大空をエゴサーチする鯉のぼり
青葉風ぽくぽく歩くおじいさん
万緑に隠すわたしの秘密基地
桐咲いて父に詫びたきこと数多
波戸辺のばら
写真のばら （夕陽）