雪積むや亡き子に手紙書く夜を

 

春の雪一通残すラブレター

 

便箋の余白しづかやヒヤシンス

 

芽吹かんとする太枝の伐られゐて

 

二度ともう逢へない吾子よひなまつり

 

 

はしもと風里

紫木蓮大きな背中の君が好き

 

春の空恋するあの子の爪の色

 

ポケットより春愁取り出すフランス人

 

ワイファイのスポットたんぽぽのスポット

 

パーカーのフードに溜まる春日差し

 

 

林田麻裕


父の字で二十歳の我へ春の文

 

アカデミー賞樹木希林のいない春

 

スケボーの少年春を回転す

 

ミントチョコぱきんと折れば春の雪

 

椿から椿へ郵便配達夫

 

 

波戸辺のばら    写真 のばら


私だつて照る日曇る日凍土踏む

 

ぬか雨に臘梅の香のほどけ初む

 

明るくて暗くて如月の空は

 

針に糸やつと通つてぼたん雪

224日 父の命日

しつかりせいよ墓地に草々萌え出でて

 

 

松井季湖      写真俳句  季湖


スクワットしよう春雪の大文字

 

それぞれに別れてその後冬林檎

 

買い物にどこまで行った春の母

 

またの春ふたりぼっちというぼっち

 

春の風美女も悪女もまだ未完

 

 

火箱ひろ

動かざる逗子の道標涅槃西風

 

雛の店時計の針のてんでんに

 

「ほつれアリ」かなりありけり春雀

 

精算機から声のユウドウ余寒なほ

 

春光や再会からのストーリー

 

 

辻 水音


三寒四温ガラス越しに会う人と人

 

山笑う「生まれました」の手紙きて

 

五線紙に書かれた春の手紙かな

 

ベートーベンの手紙みつけて日永し

 

うれしい手紙かなしい手紙あわゆき降る

 

おーたえつこ   写真 えつこ 

 


立春の御座候の白い餡

 

サーモンピンクの春のセーター光くん

 

春はそこ息をひそめるかくれんぼ

 

ひさかたのひかりきらめく如月菜

 

庭の梅もうすぐ咲くぞ帰ってこい

 

 たかはしすなお  写真 すなお

 


 

罫線はみどり春の雪つもる

 

松雪草森を明るくする時間

 

二人ずつ増える友だち春の窓

 

青空へ行こうブランコ高く漕ぐ

 

来てくださいカタクリ明るく咲かせます

 

   つじあきこ   写真 あきこ