金魚浮く女あるじが歌いだす
好きな人来た夏草の大ウェーブ
龍のような煙を上げる蚊取線香
少年は傘を差さない青葉雨
ラング・ド・シャほろと崩れて夕焼けて
林田麻裕
丘に寝て日本地球夏北斗
似顔絵の私へおはよう青葉風
砂時計梅雨の晴れ間を逆さまに
窓たたく青葉たまにはビートルズ
この家もひとつのバブル火取虫
火箱ひろ
茅花風なまえ呼ばれたやうな気が
遺りたる網戸の破れ和毛ほか
寂しさや踵に触るるすべりひゆ
濡れ髪に下駄つつかけて夏の月
髪切つて入道雲と友だちに
松井季湖
写真俳句 季湖
行水のバブルのバルブバビブベボ
ブラックホール微かに蛇のにおいして
ほろほろと崩れるお菓子灯涼し
(季湖さんちのクリへ、二句)
紫陽花につつまれ小さな青い光
勇敢な猫のたましい夏の庭
おーたえつこ
後一年生きて百歳孔雀蝶
心太糸を切れない糸切り歯
叱ったらいいヤツですが青大将
マリリンの香水ボクはワタシになる
ふくれだす鎮守の杜や梅雨の月
たかはしすなお
たゆませているこころ羊草の時間
空と地が繋がる夕立まで一歩
吊り棒で量る赤ちゃん梅雨あがる
そういえばずっとワンルームの金魚
海の日はあさって色鉛筆削る
つじあきこ
写真 あきこ
ピリオドを打つや泰山木の花
東条英機のレプリカ捨てつ朱夏
糸口をやうやくつかみ蠅叩
電話から苺ミルクのやうな声
ミシン踏めばわづかな母性星涼し
辻 水音
壊れかけた心に蓋をして夏日
ソーダ水定型通り老いる途中
夕虹や家族三人からふたり
夏の夜の履いて戻れなかつた靴
桃供ふきみのアルカイックスマイルに
はしもと風里
遺伝子の暴走したる青時雨
おにぎりは定形外で山開き
恋情は閉じ込めたまま蓮開く
青芝に下ろすNIKEのスニーカー
少年の履くスカートや雲の峰
波戸辺のばら
写真 のばら