星飛ぶやおやすみなさいを言う相手
眠りつつ夢で起きつつ火恋し
青すぎる空の青さや猫じゃらし
上弦の月の微かなへこみかな
風清んでイソシギの声よくとおる
おーたえつこ
待ち受けはあの日の空と曼珠沙華
秋気澄む見えないものを見る装置
つづれさせ左の耳のもっと奥
生真面目なカタチに転ぶ運動会
あの雲はカバのピポちゃん初紅葉
たかはしすなお
ペガサスと僕だけがいる屋根の上
星月夜眠りたくない深海魚
天高く高く４時間目を走る
いい空だきょうは背高泡立草
夕暮れもいいな柿の空がきれい
つじあきこ
写真 あきこ
眠らんとして藁塚小屋のむせかへる
月白や柩の人といづれまた
家系図をたどつてをれば地虫鳴く
少年に大き虫カゴ大花野
鵙の声笑つてをるか泣きをるか
辻 水音
眠れない芒を分けて歩いた日
眠りたい野ばらの実ほどの不安
眠れそう花野に身体ころがせば
いなびかり背中に小さきメス入る
抜糸して背中の伸びる昼の月
はしもと風里
赤ん坊すやすや太る月の夜
藤袴旅する蝶々休ませて
身の内のマグマなだめて大花野
月光の三和土に並ぶ男下駄
ゆく秋のアクリル板の内と外
波戸辺のばら
写真 のばら
ペットボトルの紅茶を通る秋日差し
雨粒を乗せてはこぼす芋の葉よ
運動会の音に合わせて皿を拭く
コンサートの拍手のような秋の雨
開けっ放しの玄関が好き吾亦紅
林田麻裕
花木槿午前十時がまだ眠い
鳥渡るアトランティスを飛び立ちて
柚子を捥ぐつっかけひょいとつっかけて
秋風の犬の風太とグータッチ
中也待つ糺の森は星月夜
火箱ひろ
重ねつく寂しき嘘や曼珠沙華
逢ひたければなまえつぶやく秋北斗
消し去れぬ気がかり胸底にダチュラ
話したいことが山ほど石蕗の花
風追うてやがて追はれて冬隣
松井季湖
写真 季湖
