繭玉抄

 

旅がしたい旅の雑誌を開いたら北海道の風の吹き出す

 

「愛してる」役者のように言わないで朝顔の花のように言って

 

おかしいなお腹に子どもいないのに人一倍の愛があふれる

 

声帯を震わせてまで愛してるなんて言えないセーターつまむ

 

クーラーは消したのだけど鼻水がドラマの一話分止まらない

         

     林田麻裕

百閒先生品評会

おーたえつこ

   百閒先生の河童忌                             消しゴム版画  水音

 百閒先生は、芥川龍之介の命日になると河童忌の句を一句詠む。毎年一つずつ。

 

河童忌に食ひ残したる魚骨かな

 

まだまだ人生を食い残してるぞってことかな。悔いが残るに掛けているのかな。

 

        河童忌の夜風鳴りたる端居かな


百閒の随筆には、風が吹くと何か不思議なこと、怪しいことが起きるんです。風とともに龍之介があの世から帰っ

てきて縁側でぼーっとしている百閒の隣にすわったような。何か始まるような。

 

河童忌の庭石暗き雨夜かな

 

 芥川龍之介は百閒の三年下の後輩です。百閒が龍之介にお金を借りて返さなかったりしていたみたい。百閒は

漱石先生からも借金してたけど、後輩にまでたかっていたんだねえ。

 百閒は、芥川が死んだのは「あんまり暑くて腹がたったからだ。」と言った。「龍之介は気が変だ。自分も気が変だ。

いっしょにいるともっと変になる。どうなるか試してみたいが、面白そうだが恐ろしい。」というようなことも友だちへの

手紙に書いた。

 

 芥川は、「百閒と一緒なら、河童の国で暮らせるだろう。」と言ったらしい。というのを、何かで読んだ気がするのだ

けれど、それがなんだったのかを思い出せない。何冊か読んだ本も探してみたけど、わかりません。気のせいか、

夢か、私の妄想か、百閒先生に化かされたか。

歳々や河童忌戻る夜の道

 

 百閒は、漱石忌でも、よく似た句を作っています。

 

  漱石忌戻れば屋根の暗さ哉

 

 


季 湖 ワールド

         松井季湖    写真 季湖

 

 お盆のかきいれ時で仕事が忙しい中、

 おしゃらいさんのお世話をするのは

 バタバタながら、

 父と親しく語らうひとときでした。

 

 そう季湖さんからラインがきました。

 

 季湖さんの盆のお膳を見てください。

 

 盆の膳父とままごとしたるよう

    火箱ひろ

 

 この俳句を思い出してるとの事です。



 

いつも素敵な写真俳句を送ってくれる季湖さん。

 

ありがとう。今回はすべて載せました。

 

皆さんも楽しんでください。


霊送りの朝、西方浄土への道に迷われないように、

あらめのもどし汁を門口に撒くのですが、

毎年のことながら、撒きながら寂しくて涙がこぼれます。  との事。

 

お団子は霊迎えと霊送りにお供えするもので、

それぞれ「お迎え団子」「送り団子」と言います。

たくさん盛ってあるのは、無縁仏さんもどうぞ召し上がってください、ということで。

なので麻殻の箸もたくさん刺します。  との事。

 

私はただただ、すごいなと感心するばかり。