冬茜コトコト豆を煮てゐます

   

 ♭の光を零し冬の月

 

 冬薔薇の棘の痛みに娘を思ふ

 

 床上げの粥に煮凝り一掬ひ

 

 モビプレップ手強し指先は冷えて

 

    松井季湖

  三十年水辺に住んで神送り

 

   冬景色映して水のくらと揺れ
   かいつむり潜るや光散りにけり
   花びらの一枚離れ冬薔薇
   一才三才ゆたりゆたりと日向ぼこ
         
    おーたえつこ

 

  少年と栗毛駆けゆく冬茜

 

  立冬の回り続ける木馬たち

 

  浮きあがる大観覧車冬の靄

 

  コミュニティーバスに乗り込む木の葉たち

 

  冬銀河最後の頁開く音

 

 

     たかはしすなお

 

  捨て身の音してギンナン爆ぜにけり

 

  冬至風呂おならもゆるむおっぱいも

 

  まごの手をかたはらに置く蕪村の忌

 

  赤い目はトモダチを恋ひ雪うさぎ

 

  仮結び蝶蝶結び年用意

 

    辻 水音

 

 

 

  かりん糖かりりかりりと一葉忌

 

  夕時雨金平糖の角育ち

 

  恋はしたいし山茶花早く散りたいし

 

  いつか読書する日のためのショール

 

  浅田家の墓はここです白鳥来

 

    波戸辺のばら

 

 

 マスクしてくちばしを得た飯田さん

 

 生まれながらの商売人の今川焼

 

 タクシーの客待ち眺め芽キャベツを

 

 冬木立招待状はどの葉っぱ

 

  先生の横顔ばかり報恩講

 

   林田麻裕