三十歳

       林田 麻裕

  五月晴あの人今日はいい女

 

 梅雨寒やワクチン打った跡撫でる

 

 ジャスミンが蕾をつけて誕生日

 

 三十歳バナナを食べて始まるよ

 

 

  あんぽんたん

      火箱 ひろ

 大丸の自惚れ鏡夏に入る

 

 緑の夜テナーサックス哭きたそう

 

 ハンモックあんぽんたんが揺れてます

 

 高槻へ帰る薄暮の夏帽子

  明易し

      松井 季湖

 あのおおき背中想う日父の日は

 

 目に残る青田ざわざわ旅に出たし

 

 川の字の崩れにくずれ明易し

 

 土用丑幟に泳ぐ「う」の文字


   ため息 

       おーたえつこ

  はつなつやおもらししちゃったけどあそぶ

 

  バナナ食うちょっとやさしくなれそうな

 

  疫病退散噴水どっと吹き上がり

 

  噴水やときにため息めいて止む

  百年後

      たかはしすなお

 青葡萄品格ないと言われても

 

 青楓ココロ乾燥注意報

 

 百年後みんなで食べる梅漬ける

 

 逃げ出した馬ゆったりと夏草を

  森の子

      つじ あきこ

 柿若葉たまに牛丼親子丼

 

 夏の森ズボンで拭いてハーモニカ

 

 森の子にせせらぎの音青葉光

 

 青空に少し疲れて合歓の花


  北極南極

      辻 響子

 名画座にちんまり座り古扇

 

 襟元のフリル真つ白日の盛り

 

 あの人と同じふるさと夜店の灯

 

 地球儀の北極南極大西日 

  ハ グ

      辻 水音

 友に会ふハグはだめよとアイスクリン

 

 獣出るらし青葉時雨て明智塚

 

 定食に赤いコンニャク梅雨深し

 

 話ある?聞くよ何でもかなぶんぶん

  母の日

      はしもと風里

 母の日を超えて呼吸をやめた娘よ

 

 悲しみの顔がほどけぬ半夏生

 

 二回目の月命日で梅雨晴れて

 

 微笑みの写真に供ふさくらんぼ


  LINE

      波戸辺のばら

 五月闇かんかん和釘たたく音

 

 登山靴こんなとこにもディスタンス

 

 ピンと鳴る自治会LINE緑の夜

 

 とりねむるひとねむるなつのもりさわぐ